今回は渋谷を拠点とした社会人フットボールクラブ「TOKYO CITY F.C.」を運営する、株式会社PLAYNEWさんにインタビューさせていただきました!
フットボールを通じた渋谷の新たな街づくりに向けてのイベント開催や、デジタルマーケティングを生かしたPR戦略など、現代のテクノロジーを駆使してチーム運営を行うPLAYNEWの取り組みに迫ります。
TOKYO CITY F.C.は、2014年に立ち上がった渋谷からJリーグ参入を目指す、渋谷生まれのフットボールクラブ。
多様なバックグラウンドを持つ選手やスタッフがSNSを通じて集まり、「Football for good “ワクワクし続ける渋谷をフットボールで”」というビジョンのもと、これまでにないフットボールクラブづくりにチャレンジしています。
1 渋谷をスポーツによるエンタメシティに
左から代表取締役CEO山内一樹さん、取締役COO酒井翼さん
Q. まず初めに、株式会社PLAYNEWの事業内容とビジョンを教えてください。
PLAYNEWはフットボールクラブTOKYO CITY F.C.の運営を行っております。サービスは試合を観に来ていただいたお客様に楽しんでもらうことを第一にしています。
特色としては、我々が実現したいビジョンとして描いている「Football for good “ワクワクし続ける渋谷をフットボールで”」というもの。
もう少し噛み砕いていうと、この渋谷の街中にサッカーを中心としたスポーツコンテンツを提供することです。
右を向けばサッカーの試合がやっていたり、ちょっと歩くとスポーツバーでトークイベントが行われているなど、渋谷でスポーツイベントが24時間365日行われている状況を目指しています。
PLAYNEW=新しい遊び、スポーツを新しい遊びの一つとして作っていこうという意味をこめて、社名をTOKYO CITY F.C.ではなくてPLAYNEWとしています。
これらのビジョンを実現するために、フットサル大会の企画やトークイベントなども開催。渋谷の街中をサッカーが常時行われる場所にしたいです。
Q. 2014年に渋谷を本拠地としたフットボールクラブ「TOKYO CITY F.C.」を立ち上げたきっかけを教えて下さい。
僕は大学3年生の時にスポーツマーケティングの会社を起業することに。色々なチーム・リーグ・業界に対して「もっとSNSをこうやって使いましょう」とか「デジタルマーケティングをこうやってやりましょう」という提案をしていました。
興味をもって下さる方もいる一方で、サッカー界の多くの方々が「まだうちには早い」「SNSの発信を強化することで、TVとか新聞によって情報を得ている人々を軽視していると思われる」「今までのファンを大事にしたい」など同時に様々な意見もいただきました。
正直あまり打っても響かないことも多く、もどかしさを感じていました。
だったら自分たちでチームを立ち上げて前例になろうと思ったのが大きなきっかけの一つ。
あときっかけはもう一つありました。我々が目指しているJリーグのお客さんの年齢層は意外にも30歳~40歳前後くらい。さらに年を追う毎に年齢層は上がっています。
これは今までのファンがついてきてくれている一方で、若い新しいファンを獲得できていないとも捉えられます。
そこで、どうせ作るなら若い人達がかっこいいと思うようなチームを作ろうと考えました。
2 今どきで、フェス感覚のフットボールクラブに
Q. Jリーグに若いファンが少ないのはなぜだと思いますか?
特にヨーロッパのチームは、選手の見せ方やクリエイティブなどが上手くて、ビジュアル的にすごくかっこいいんです。
一方で日本のサッカーチームは、そういう所があまり追いついていないのが1つの要因ではないでしょうか。
若い世代にとって、ビジュアルは自分のアイデンティティを示すためにも大事です。だったら我々はそういうカッコよさに力を入れていこうと。
すると当時はJ1から数えて14部の超アマチュアでしたが、「14部なのにこんなに凝るんだ」というギャップで面白がってもらえました。
従来のスポーツチームの広報の業務は基本的にはマスメディア、新聞局や地元のTV局などの取材対応をするだけでメディアの変遷に鈍感な傾向もあります。
そこを僕たちは0から作って、新しいメディアの駆使に取り組みました。
Q. 実際、サッカーの試合を見に行ったりサポーターになるのは敷居が高く感じます。それも新しいファンがつきづらい要因の1つとしてありそうですよね。
そうなんです。そのために私たちは、「ミーハー」と呼ばれる方も歓迎の文化を作ることを心がけています。
今はありがたいことに、我々のチームのサポーターになりたいという声もいただいている程。嬉しいと思う反面、私たちが大事にしているコアバリューの1つに「スクランブル」という言葉があります。
これはいろんな人と入り乱れて、入り混じってクラブを共創していくという意味。
チームがサポーターだけのものではなくて、みんなで作っていくから、初めて来た人が怖くないような状況を作りたいと考えました。
いわゆるコアサポーターが中心ではなくて、一見さんでも楽しめるような空気感を作ろうとしているチームにしていきたいんです。
まだ規模が小さいからこそ、今のうちからそういう形を作っていきたいと思っています。コンセプト的にはフェスに行くような感覚にしたいなと。
3 “兼業フットボーラー”を提唱する訳とは
Q. 選手の皆さんはどのように集めているのですか?
チームの立ち上げ当初は、選手はSEOで獲得していました。基本的にホームページを見て応募してきてくれる人が多かったんです。
サッカーチームのこのカテゴリーの中でこのケースは稀で、しっかりとしたホームページを構築していたことにも惹かれて応募してくれた方がほとんど。
ありがたいことに立ち上げて2〜3年で、50・60人もの募集があり、予想以上の反響が獲得できました。
また、当時は対応に追われていました(笑)。
狙ってやっていた訳ではありませんが、結果的にホームページをきちんと作っていてよかったと今では感じています。

(現在はPRtimesも利用したセレクションを開催)
現在では選手の獲得は、ホームページ経由よりもスカウトの割合が高くなっています。
その際、基本的には我々の掲げているビジョンだったり、コアバリューなど根幹の価値観が合うかどうかの「ビジョン面」やサッカーの「スキル面」がポイント。
最後にその人がいることでチームが明るくなるなどの「キャラクター面」の3軸で面接をしています。
そして僕らが提唱しているのが“兼業フットボーラー”と呼ばれるもの。
実はTOKYO CITY F.C.の所属選手でプロ契約をしている選手は数名で、ほとんどの選手が働きながらプレイしています。サッカーがただ上手い人は僕らのチームには合いません。
これにはサッカー選手としてももちろん、社会人としても上昇志向がある人やキャラクターが整っている選手を是非集めたいと考えています。
現在ではベンチャー・スタートアップ企業に勤めている方や、大手企業で勤務しているプレーヤーだったり、モデルをやりながらプレイしている選手も。
プレイだけでなく、僕らと一緒にサッカースクールやYouTubeチャンネルの運営など、いわゆる運営サイドの動きも行っていけるような、新しいサッカー選手の在り方を作っていきたいですね。
Q. 選手の活動頻度を教えて下さい。
週4回の頻度で活動しており、シーズン中は基本日曜日が試合で、土曜日の午前と平日は多くて2回午後に練習。
それ以外は個人に任せています。
Q. 兼業フットボーラーを推奨しているということですが、兼業はかなり苦労もあるかと思います。この点はいかがでしょうか?
体力的にきついのはもちろん、満員電車にボールを持って行ったり、会社を早退するときにボールを持って出ていくのが気まずいなんて声も。
大変なことも多いですが、できるだけこちらで環境は整えていきたいと考えています。
そして中には兼業フットボーラーを楽しんでいる選手も。
例えば人材系のベンチャーで働いている山之内選手は、自分の仕事とサッカーのことなど兼業フットボーラーとしての体験を自らSNSなどを通して発信しています。
新しいクラブ運営の取り組みの一つとして、今後もそういった選手を増やしていきたいですね。
4 イベント企画によって生まれる、新しい繋がり
2019年に開催された「渋谷ベンチャーフットサル」
Q. クラブの運営だけでなく、様々な企業と一緒にイベントを企画したりパートナー契約をされたりしていますが、どのように企画されているのですか?
企業や地域の方から依頼をいただいてそれに合わせて企画を立てていくこともあれば、僕らとして狙いを持ってタッグを組むために依頼するなどやり方は様々。
企画の提案については、常に社内のSlackで雑談ベースで意見収集しています。
昨年から始まった、渋谷に本社を構えるベンチャー企業限定のフットサル大会「渋谷ベンチャーフットサル supported by IPPO」を開催。
これはベンチャー企業とのつながりをもっと作っていきたいという意図があった中で、IPPOさんにもご協賛いただき、多くの企業に参加していただきました。
コロナの影響も踏まえて開催時期を延期しておりますが、好評だったので2020年も開催する予定です。
Q. 様々な企画を通して発見できたことはありますか?
例えば過去に東京銭湯さんというウェブメディアの会社と共催で、銭湯イベントを開催しました。
その時はたまたま渋谷区の会社の方と雑談していく中で、サッカーチームの価値と銭湯の価値はお互い地域コミュニティーを作るという点で似ているところがあるよねと、いうことで合致。
フットサルと銭湯を掛け合わせたイベントをやったら面白そうだよねということで話が膨らんでいったのがきっかけです。
結果として生まれた企画が、2019年11月に行われたサッカーと銭湯を通じた地域交流イベント「渋谷ほっとサルカップ」。フットサルの試合を行ったのち、銭湯で入浴。さらには脱衣所で交流会を行うという斬新なイベントです。

今まではただ単にイベントを行うだけでしたが、銭湯を掛け合わせることで銭湯が好きな人へのアプローチも可能になるなど、新しい繋がりが誕生しました。
工夫なくサッカーのイベントを告知したとしても、来てくれるのはサッカー好きだけになってしまいます。
だから自分たちが街中に出て行って、「サッカーってこんなに面白いんだ」「サッカーってこんな見方があるんだ」という風に感じてもらえる人を増やしたいと考えました。その可能性があるのが渋谷に拠点を置く理由の一つでもあるんです。
5 PLAYNEWと渋谷のこれから
Q. 最後に、PLAYNEW とTOKYO CITY F.C.が目指すものは何でしょうか?
我々にとって「Football for good “ワクワクし続ける渋谷をフットボールで”」がやはり一番の目標で、スポーツが遊びの選択肢になるようにしたいです。
渋谷をフットボールを通じてワクワクさせる。そのためにチームは今のまま8部にいてはいけません。
一般の方によりワクワクしてもらうためにも、もっとカテゴリーをどんどん上げて、強いチームと戦う必要があります。
ハードルは高いですが、せっかく0からやっているのでそういったゴールに向かっていきたいです。
ゆくゆくは渋谷でスポーツがあるライフスタイルをほかの町でも当たり前にしたいというビジョンも。渋谷をスポーツによるエンタメシティするために、これからも精進します。
編集後記
PLAYNEWさんのスタートアップ精神を持ち、誰もが気軽に参加できるチーム作りをしているところなど、メンバーのキャリアを活かしたクラブチームづくりが印象的でした。
若者に対してのアプローチやサッカー好きでなくても参加したくなるイベントの開催など、いずれこのような取り組みが日本で当たり前になっていく日が来ると思うと本当にワクワクします!
またプレーヤーのあり方についてもとても柔軟な働き方を提案していて、今まで仕事のためにサッカーを諦めていた人々の新たな選択肢になるでしょう。
人として魅力的な選手で構成されるチームに惹かれたくさんの人が集まっているTOKYO CITY F.C.とエンタメシティとしての渋谷のこれからが楽しみです!