リモートワークをはじめスタートアップの働き方が多様化する中、2018年5月から600坪のGINZA SIXにオフィス移転した弊社クライアントのプレイド倉橋社長へインタビュー!
移転を手がけた弊社の代表関口も交えて、移転前から今までを振り返っていただきました。
オフィス探しから入居して半年を振り返ってお話を聞くと、他のベンチャーやスタートアップにも参考になるいくつかの取り組みがたくさん。
そして最後には、weworkのようなコワーキングスペースやリモートワークの推奨、インキュベーションオフィスなど選択肢がある中で、自分たちのオフィスを構えることを選んだ狙いにも言及していただきました。
1 移転前
1-1 移転のコンセプト決め
Q.今回の移転は最初からイメージされていたんでしょうか?
A.当初はGINZA SIXのような立地や、内装のイメージコンセプトはなかったです。
以前のオフィスが手狭になるのを見越し、1年間かけてオフィスを探していた中で、様々な物件の提案をいただきました。
Q.GINZA SIXに感じた魅力はなんでしょう?
A.何かが大きく変化するときは日常的な流れからは生まれないと考えています。
500坪〜700坪で様々な物件を見ましたが、何かが変わる気がしなかったんです。
移転という大きなきっかけをあえて自分たちに「負荷」をかける移転にしたいと考えていました。
その中で関口さんからのGINZA SIXへの移転提案はかなり意外でした。
しかし初見からここしかないというイメージを持つことができたオフィスでした。
(ここだけの話、提案した関口も驚きでした)
Q.この規模ですと代表ではなく担当を設けて探すことが多いですが、倉橋社長が前線に立って探した理由とは?
A.社長が一番考えないで誰が考えるんですか?(笑)
組織や事業の方向性を決めるのと同様、みんなが働く場所や空間の方向性は同様に重要です。
もちろんオフィス作りが好きという事もありますが、オフィスはただの働く場所ではなく、企業としての価値観を社内外に体現する場所だと考えるからこそ、誰かに任せっきりでオフィスを決めるのはナンセンスだと思っています。
1-2 社内へGINZA SIX移転の共有
Q.正直GINZA SIX移転ともなると反対意見もあったのでは?
A.もちろんありました(笑)
経営陣で「なぜここに移転するのか?」全社員で「ここで何をしたいか?」議論しました。
可能な限り全員で移転することに向き合い考えてきました。もちろん最終的にはトップ(自分)がリスクをとって決断するしかないと思います。
Q.150坪から600坪への移転となると投資家への説明もかなり大変だったのでは?
A.今回の移転を「点」で考えないことを強調しました。
最大300人が使うオフィスを考えた時、300坪、500坪と2回移転する場合と、600坪を借りるのではどちらが企業成長への正しいプレッシャーをかけられて、且つコストも合理的かを説明しました。
同時に、会社や事業の勢いを、オフィスの移転という1つのストーリーを活用することで、社内外に向けて伝える目的も置いていたので、最終的には投資家を含めて全ての人に応援してもらう事ができました。
1-3.オフィスの内装コンセプト決定
Q.今の内装が出来上がるまでの背景を教えてください
A.一番はオフィスをみんなで作っていくことを意識していました。
最初は、思いつく限りの要望が叶い、ファシリティ(設備)も全て揃ったようなオフィスパターンも検討しました。
設備も内装も充分良いんだけど、なぜかモヤモヤがずっと晴れませんでした。
思い切って内装設計のデザイン案を一度ゼロベースに戻し、設計パートナーのトレイルヘッズさんと改めて議論しました。今回のオフィスによって目指すプレイドの未来をすり合わせていった際に「完成しないオフィス」というコンセプトが生まれました。
会議室や区切るための壁もない、そして固定デスクもないところから、会社の成長に合わせて什器や内装を加えていく形を取っています。
「完成品」として納品される入居時のオフィスに、未来の自分たちが合わせるのではなく、人数も事業もこれから成長する自分たちに合わせて可変的になれるよう、入居時はMVO(Minimum Viable Office : 実用最小限のオフィス)でいこうと決めました。
Q.経営陣以外のメンバーとも話し合われたのでしょうか?
A.大枠は決めていたので、社員にはオフィスをどう使いたいかを一緒に考えるワークショップを開きました。
その中で、デスクワークも会議もイベントも共存できるオフィスがイメージとして出来上がっていきました。
Mockもその時に社員から出たアイデアで、椅子やテーブルなど状況に応じて使い分けのできるモジュールです。
そのほかにも以前のオフィスで好評だったカフェスペースは今回も採用しました。これは流動的なオフィスの中で人の「交点」を作る役割として機能しています。
(倉橋社長のインタビュー聞きながらふとAppleのジョブズもトイレを設置する際に同様の考えを持っていたのを思い出しました)
Q.ワークショップは具体的にどんなことをしたのでしょうか?
A.「スタートアップとして回帰したい」などのモメンタム(方向性)をいくつかキーワードとして僕から示した後に、それらのキーワードから「どう働きたいか?」「どういう環境にしたいか?」の意見を出していきました。
その際にファシリティを目的にしないことをルールとして唯一定めました。
「通常のオフィスであれば◯◯がある」から離れて考えてもらうためです。
Q.デスク配置は固定席ではなくフリーアドレス(自由な配置)ですか?
A.基本はフリーアドレスですが、各自や各チームのフェーズなんかも考慮しそれぞれが決めてますね。その日の気分で好きな椅子を選んで座ってる人もいます。
2 移転後
2-1 移転後の効果
Q.目に見えて移転後に大きな変化はありましたか?
A.まず採用への応募がとても増えました。
月あたり今までの6-10倍くらいきましたね。
2018年春くらいから短期間で話題性のあるトピック(プロダクトのリリース・資金調達・移転)を出してきたので、それらが6〜7月に形になって来たのかなと思います。
Q.売り上げや実績も上がりましたか? また効果を感じる時はありますか?
A.あまり直接的なことはお伝えできませんが、引き続き好調です。
商談を例に挙げると間仕切りのないこの広いスペースでやることに効果があると思います。
会議室とデスクワークの境目がないので全員でひとつの環境にいる一体感があります。
一番リラックスして仕事に臨める環境を作ったからこそ、お客様にもベストな状態で臨めているのだと思います。
Q.既存のメンバーの心境の変化はありましたか?
A.うーん意外に無いかも。勤務地は銀座に変わるものの2-3日くらいで順応してましたね。
ただ来客してくださる方たちにとってもオフィスのインパクトがあるので、移転の経緯を説明を社員がそれぞれ話しています。
結果的にですが、オフィスに込めた会社の価値観や魅力を自分の言葉で伝えてくれるのはとてもいい影響だと思います。
2-2 移転後見えてきた改善点、修正点、後悔
Q.正直、今思うと失敗したことはありますか?
A.隣の区画も借りればよかったです(笑)
広さ的にはまだ今のオフィスで十分ですが、長期で考えるなら隣まで借りてしまってもよかったと思います。
3 オフィスの価値
3-1 働き方の選択肢がある中で600坪のオフィスを選んだ理由
Q.リモートワークなどの新しい働き方や、Weworkなどの選択肢もあったと思いますがなぜあえてオフィスだったんでしょう?
A.一番は社員が物理的に同じ空間にいないと伝わらないものが必ずあると考えているからです。これは言葉で伝えるのは難しいですが、一体感や熱気みたいなものは感じています。
ちなみにリモートワーク自体は当社でも認めています。
リモートよりもオフィスの方が生産性が上がるって理由で、社員自身が出社を選んでくれるオフィスが理想です。
ただ、もちろんリモートを生産性観点でうまく使えばいい。あくまで目的ありき。
今回はそういった思考をうまく会社の実態として取り込めたと考えています。
Q.シード期から現在まで振り返って大事にすべきマインドはありますか?
A.人数が増えることによって当事者意識をみんなが持つ工夫は大事だと思います。
恵比寿のオフィスで20人規模になった時くらいから少しずつ感じており、前の五反田のオフィスから意識して、ワークショップなどを行うようにしていました。
30-40人くらいで同じ場所で同じ時間をともにすることは作るようにしていましたね。
4 編集後記
インタビューを通してですが倉橋社長がオフィス移転に対しての熱意がハンパじゃないです。
一般的な移転であれば担当者や仲介業者、内装業者に任せてしまうところを、自分たちの課題として考え続ける姿勢は本当に素晴らしいです。
さらにその意識を社員全体にまで共有をしている徹底さはすごいとしか言いようがありません!数多く仲介をしている弊社から見てもかなり珍しい会社だと思います(笑)
自分たちでWhatやHowを徹底的にこだわって考えているからこそ、社員のモチベーションや社外への発信にも繋がっているのだと感じました。
移転を取り扱う弊社としては、倉橋社長の考え方はスタートアップのオフィス戦略として一つのスタンダードになる予感がします。
今回はシード期から200人以上のスタートアップでオフィス移転を考える、幅広い経営者の方々に参考になったのではないでしょうか。
次回お伺いする際はGINZA SIXに移転しての後日談や検証にさらに踏み込んだものもインタビューしたいと思います。