インタビュー

「FinGATE TERRACE」特集記事:第二弾「FinGATE TERRACE」 設立に携わった4社に聞く

2020年4月にオープンしたスタートアップ向けオフィス「FinGATE TERRACE」

FinGATE TERRACEの5〜7階部分は平和不動産株式会社、不動産仲介の株式会社IPPO、内装デザインを担当したSAKUMAESHIMA、トレイルヘッズ株式会社の4社の連携によって作り上げられました。

平和不動産から3社へ依頼した背景、それぞれの会社がFinGATE TERRACEの実現に向けてどういったアプローチをしていったのかを取材しました。

 

平和不動産株式会社 

1947年に創業された、日本の金融マーケットの中枢的機能・役割を担う東京、大阪、名古屋、福岡などの証券取引所ビルのオーナー企業。

「国際金融都市・東京」構想に基づき、創業時から軸足を置いている日本橋兜町・茅場町の再開発に注力しています。

平和不動産株式会社 公式HP

 

株式会社IPPO 

オフィス仲介を軸にスタートアップ・ベンチャー企業を支援している不動産会社。

株式会社IPPO 公式HP

 

トレイルヘッズ株式会社

「働き方」の拡張をおこない、「働く場」が持つ課題を解決するフィールド・デザインの会社。
企業や人間が本来持つ「らしさ」を引き出し、働くフィールドの提案・デザインをしています。

トレイルヘッズ株式会社 公式HP


『学ぶ喜びをすべての人へ』を掲げる、スタディプラス株式会社のオフィス

 

SAKUMAESHIMA

朔永吉氏と前嶋 章太郎氏の共同主宰による建築設計事務所。

建築的な思考をベースに、住居や商業施設の建築設計のみならず、オフィス・店舗棟の内装設計や展覧会の会場構成など様々なプロジェクトに取り組んでいます。

SAKUMAESHIMA 公式HP


ソニーのデザイン部門のサテライトオフィス「SONY CREATIVE CENTER TAMACHI OFFICE」
Design Direction:Sony Creative Center

 

1.「FinGATE TERRACE」のコンセプト設計 ー平和不動産ー

まずはFinGATE TERRACEの開発者である平和不動産さんに、IPPOとSAKUMAESHIMAさんへオフィスづくりの協力を依頼した理由を伺いました!

Q.プロデュースにあたり不動産仲介であるIPPOに提携を依頼した背景を教えて下さい。

今回の内装を手がける上では、区画毎にスタートアップの成長ステージに配慮したレイアウトにしたいと考えた為、スタートアップの事業成長に対して知見のあるIPPOさんに内装面のプロデュースを依頼しました。

また、スタートアップの誘致に長けているIPPOさんと提携することで、FinGATEをより多くのスタートアップへリーチできると考えたことも、お声掛けをした大きな理由の一つです。

左から平和不動産株式会社 近藤さん、荒さん、村井さん、桐生さん

Q.5〜7階部分をセットアップオフィスにした背景とは?

一番の理由は入退去時の手間とコストを抑えられる内装であるということです。

IPPOさんと議論をしていく中で、実際スタートアップの方からは内装にこだわるというよりも「できるだけ入居までのタイミングを短くしたい」「判断するポイントを減らしてすぐに入居したい」「初期費用を減らしたい」という要望を受けることが多いと知りました。

今までのFinGATEシリーズとは異なる新しい考え方でしたが、スタートアップのオフィス選びに精通しているIPPOさんと、本当にスタートアップが求めるフロアづくりができたらと考え、5〜7 階フロアのプロデュースを依頼しました。

25坪・50坪というサイズは、入居したテナントが成長し、増床が必要となった際にニーズのある面積で区分けしています。既存のFinGATEにはありません。

IPPOさんの強みは、シード・アーリー等スタートアップの成長ステージに合わせたオフィス選びのポイントを熟知している点です。
これくらいの面積に入る企業はこのくらいの人数で、こんな悩みがあって……などを先回りできたことが、成長中のスタートアップに向けた内装つきのオフィスを設計する上で何よりも良かったです。

Q.ビル全体のデザインおよび2〜4階の内装をSAKUMAESHIMAさんに依頼した背景を教えて下さい。

FinGATE自体がベンチャー・スタートアップを支援する事業であるため、設計者の選定においても同じストーリーで検討を行いました。

中でも、SAKUMAESHIMAさんSONY 品川本社 PORT」をきっかけに、今若手で注目されている設計チームであり、何よりも「FinGATE TERRACEをきっかけに兜町を盛り上げていきたい」という強い気概を感じた為、依頼をさせていただきました。

当社の考えや要望に対して、丁寧に耳を傾けていただいたお二人の印象が強く、それを上手くデザインに落とし込んでいただきました。
結果的に、我々の想像以上の魅力的な施設づくりをしていただき、とても感謝しています。

Q.それぞれの企業に依頼するにあたり、苦労した点があれば教えてください。

プロジェクトを進めていく過程で、FinGATEへの入居要望も増えてきたことから、当初の予定より大幅に整備区画を拡大しました。

その際、各区画において、「本当に必要とされる機能は何か」という点を、改めて時間をかけて検討しました。企業の属性や成長ステージごとに求める機能も異なるため、結果として様々な仕様や面積帯のオフィスを計画しました。

 

2.スタートアップが求めるオフィスを ーIPPOー

平和不動産さんから提携の依頼を受けたIPPOがどのようにプロジェクトに携わっていったのか、そして内装を手掛ける際にパートナーのトレイルヘッズさんにどのような依頼をしたのかを聞いていきます。

Q.平和不動産さんからどのような依頼を受けたのですか?

スタートアップのリーシングの実績、渋谷をはじめとしたベンチャースタートアップ界隈の人脈を生かして、茅場町、兜町のエリアを盛り上げる存在になってほしいと依頼をうけました。

元々、平和不動産さんとは不動産会社としてこの街をどうやって盛り上げていくのか、どのような取り組みをしていくのかを話す関係でした。
そこから弊社で主催したビルオーナーさん向けの1周年イベントにご参加いただき、改めてIPPOのことを知ってもらうことができたことが今回のお話をいただくきっかけになりました。

Q.IPPOの担当フロアの内装をトレイルヘッズさんに依頼した理由を教えてください

スタートアップを熟知していて、成長フェーズを理解して一緒に作ってくれるという点でトレイルヘッズさんに依頼をしました。

茅場町・兜町の街自体は、オフィス選びをする時にパッと候補にあがる場所ではないと思います。だからこそ一緒に物件のこだわりをストーリーを立てて明確に伝えられるパートナーが欲しかったんです。
それに当てはまる会社がトレイルヘッズさんでした。

普段でしたら仲介をしたテナント様から依頼を受けるので、そのテナント様がやりたいことを実現させるというやり方をします。

ただ、今回はまったく相手の顔が見えない中で作っていくというのが非常に難しかったです。それができたのは、同じ目線での知見と情熱を持っているトレイルヘッズさんだったからだと思います。

Q.プロジェクトに携わる上で、重視したことは何ですか?

平和不動産×IPPO×トレイルヘッズでないとできないものを作りたいということを一番に考えていました。

平和不動産さんは本社オフィスがある日証館と同様、兜町に古くから根付いている会社です。

渋沢栄一イズムが息づいている平和不動産さんと、その歴史に理解のあるトレイルヘッズさんと我々とでなければできないものを突き詰めました。

Q.トレイルヘッズさんに具体的にどのような提案をしたのですか?

渋沢栄一がアイデアと行動力で会社を作り、ここ兜町に根付かせていったように、兜町は沢山の経営者によってその思いが引き継がれてきた街です。
ある意味ベンチャーイズムとも捉えられるこの考えを物件に取り入れたいという思いがありました。

トレイルヘッズさんと打ち合わせをする中で「Take Over」(引き継ぐ)というコンセプトを提案いただきました。

そのため「内装をどんどん次の方に引き継いでもらう」というコンセプトを具体化できるように進めました。

その中でいくつかプランを出していきましたが、結果的に落ち着いたのが現在の内装です。

Q.IPPOの提案で実現したものを教えて下さい。

フロアの規模ごとに入居する企業の成長フェーズが違うので、25坪の区画には会議室のデスクとイスを設け、50坪の区画の会議室には設けなかったりと細かく考えて実現しました。

あとは、オフィスの「抜け感」を大事にしました。

FinGATEに入る企業は情報の機密性やセキュリティに気を遣う業種です。
しかし会議室を完全にブラインドにしてしまうと、スタートアップらしい一体感が出ず、逆に閉鎖的でコミュニケーションロスが生まれてしまいます。
勇気を出してあえてガラスパーテーションにするという提案も採用していただきました。

その他にも原状回復の項目なども作る段階で決めました。
過去にセットアップオフィスに入って退去の際に原状回復費用が高くなるケースも見てきた為、退去も含めて移転プロジェクト全体のコストが見えるようにしたのも、IPPOならではの意見だったのではと思います。

Q.今回のプロジェクトの経験を活かし、今後挑戦したい取り組みなどありますか?

今回の「FinGATE TERRACE」はソフト面にも重点を置いた物件ですが、実際ビルは建てたものの、ソフト面の提供に苦労されている物件は少なくないです。
そこを立て直すために我々の知見は生かせると思っています。

これからはベンチャー・スタートアップの誘致に興味を持っているビルオーナーさん、既存のアセットを活かしてベンチャー企業のために何かしたいデベロッパーさんなど「やりたいけどどんなものを作れば良いかわからない」と困っているオーナーさんともお仕事をしていきたいです。

最後に今回は平和不動さんも初めての取り組みで、それぞれ手探りながらオープンまで1年もかかりました。
紆余曲折ありましたが、長い期間付き合ってくれた平和不動産さんに感謝の気持ちを伝えたいです。
またトレイルヘッズさんも様々な要望に対応して頂き本当に助かりました。

レベルアップしてこのような取り組みをもっと広げていきたいです。

3.作り手が考えるスタートアップオフィスとは ートレイルヘッズー

IPPOから5~7階の内装設計の依頼を受けたトレイルヘッズさんに、提案から施工までについてを伺いました。

Q.IPPOからの依頼を受けた際、どう思いましたか?また引き受けることを決めた背景を教えて下さい。

一番初めにこの話を聞いたときは、過去に行ったことのない取り組みだったのですが、トレイルヘッズらしさをどのように表現しようかじっくり考えました。

通常は物件が決まったクライアントから依頼を受け、オフィスで体現したいことや収容人数などの機能面をヒヤリングしながら進めていきます。
ですが、今回は入居をする方を想像しながら空間を作る必要がありました。

そこで、今まで手がけてきたスタートアップオフィスプロジェクトを振り返りながら情報を整理していきました。
すると、セットアップでこういう空間を作ったら、こんなフェーズの、こんなスタートアップの方に受け入れてもらえるのでは?というアイデアがどんどん浮かんできたんです。
一層スタートアップに寄り添える空間が提案できると思いました。


左からトレイルヘッズの櫻井さん、山口代表、建築士の菅さん

Q.空間の提案をしていく過程で、どのように構想していったのか教えて下さい。

私たちは今まで、マンションの1室から何度かのオフィス移転を経て500坪程のオフィスにまで成長するスタートアップ企業を数多く手がけてきました。

その過程を振り返ると、それぞれに特徴があることに気付き、過去の経験から坪数別にパターン化してフロアの構想を練りました。
企業フェーズと人数規模が比例していることが前提になりますが、入居される企業が求める機能やコスト、デザインに対する思いはそれぞれ違うので、ある程度の柔軟性も踏まえて考えていきました。

Q.平和不動産さんの行っている街づくりや構想や、茅場町・兜町の歴史的背景はデザインにどう影響しましたか?

構想を練る段階でエリアの歴史、平和不動産さんがどのような会社か、物件が持つポテンシャルなどをできる限りリサーチしました。

兜町の歴史について調べた際に登場する渋沢栄一は、現代に置き換えるとスタートアップを支援する投資家に近いなと。
そしてこの場所を作る上でキーワードの一つにしたら平和不動産さんらしくなるのではと考えました。

スタートアップや様々な業種を支援し、古くからの建物を受け継いでいく……といったハードとソフトどちらも支援するという構想が浮かび、デザインを考えていきました。

Q.具体的にこだわったポイントを教えて下さい。

ゾーニングに関しては働く場所を選べるというコンセプトのもと作っています。

なぜ選べる必要があるのかというと、スタートアップは常時様々な人材が入ってきますが、当然のことながら個々の気持ちの良い働き方は異なります。
今のメンバーだけのことを考えるのではなくいずれ仲間になる人のことまで想定し、多様な人を受け入れられる働く場を想定することが大切だと思いました。

例えば50坪のフロアでは、手前に会議室とラウンジ、奥にカウンター、その奥に執務という分け方ができるよう、来客ゾーンと執務のスペースを分けています。
また来客ゾーンは奥に行くほどデスクの高さをあげていくことで、手前は来客、中央は普通の打ち合わせ、奥は給湯の設備とセットになっていて社内向け……というように用途によって分けられるゾーニングをしています。

Q.他にスタートアップを意識し、工夫したポイントがあったら教えて下さい。

人が増えてもフレキシブルに対応できること。顔が見えるオープンな空間であることです。

50坪程度の大きい規模感のフロアでは顔合わせるタイミングを導線で作っています。
例えば、執務スペースとミーティングスペースの間にラウンジを作ることで執務室から移動するときにラウンジで顔合わせるタイミングができ、ちょっとした会話が生まれることで社内コミュニケーションに繋がります。

また目線を遮るような高い障壁もないことがベターです。

他にもフィンテック系や資産運用会社が入るので、セキュリティが担保される設備を作ることには気を遣いました。

しかし基本的にはスタートアップの特徴である、入った瞬間にオープンな空間を意識して作っています。25坪の区画ではエントランススペースを作らず、オープンなラウンジとエントランスが共存するような空間を想定しています。

Q.このプロジェクトの感想や今後の目標を教えて下さい。

スクラップビルドの考え方ではなく、既存の間仕切りを組み替えることと新しいアイデアをミックスするエコフレンドリーな空間づくりができたことにやりがいを感じました。

これは平和不動産さんやIPPOさんの理解があって実現できたことです。
この思想を持ったセットアップオフィスであればこれからも挑戦したいですね。

 

4.既存ビルを活かすオフィス作りとは ーSAKUMAESHIMAー

平和不動産さんからFinGATE TERRACEのビル全体のデザインおよび1〜4階の内装設計を任されたSAKUMAESHIMAさんのオフィスづくりに迫ります。

Q.平和不動産さんの依頼を受けたきっかけを教えて下さい。

僕らがHPに掲載している過去に手がけた内装を見て、声を掛けていただいたのがきっかけです。

担当の方から非常に熱意を持ってプレゼンしていただき、ただビルの内装をするのではなく、シリーズのコンセプトや街への貢献を考えたプロジェクトに非常に感銘を受けました。

広い視野を持ち、街を動かしているオーナーさんの熱意に応えたいと思いました。

Q.Fintechや金融系の業種がターゲットだと聞いて、いかがでしたか?

コミュニケーションやコラボレーションを目的とするシェアオフィスとは業態が違い、金融業向けの防音性やセキュリティ面を第一に考えなければなりませんでした。

特徴のあるシェアオフィスの構想を練るのは面白かったです。

Q.今回一番大事にしたポイントを教えて下さい。

既存ビルのポテンシャルを活かすことと、「施設の顔」となるラウンジとエントランスの考え方です。

既存ビルの特性や状態を判断し、空間をシェアして過ごすうえで機能的に計画することを心がけました。

ラウンジやエントランスは、業種柄オープンな設えになりすぎないように気を付けました。


SAKUMAESHIMA自社オフィス。ビルのポテンシャルが最大限活かされた内装。

Q.セキュリティ面で、遮音性・斜視性などの課題はどのように解決していったのでしょう?

遮音性は音の回りやすいペリメーターエリア(窓や外壁に面しているエリア)での遮音性を特に気に掛けました。

部屋間の壁が直接窓サッシにぶつかる納まりを避け、既存の柱にあてるようにしています。
また3階の会議室でラウンジからの空間の繋がりと広がりを考慮しつつ、会議室としての機能を担保するためにカラーの曇りガラスを選択しました。

情報セキュリティを守りながらも、ラウンジでの生き生きとした活動的な様子は失わないようにしています。

Q.最後に今回のプロジェクトの感想を教えて下さい。

一棟改修プロジェクトを限られた条件の中で、どこに力を入れると効果的なのか探りながらの構想でしたので、常に全体性と細かな部分を行き来しながら纏められたことは非常にいい経験になりました。

平和不動産さんをはじめ、想いのある方々とこのような仕事ができて本当に良かったです。

 

編集後記

今回のFinGATE TERRACEでは、平和不動産さん、IPPO、トレイルヘッズさん、SAKUMAESHIMAさんの4社それぞれが入居する会社を想定し、試行錯誤して作り上げていることがわかりました。

また、それだけではなく、街づくりも意識してビルの受け継がれていく大事さや、来訪者や近隣への見え方など各社が様々な点で良い作用を生み出せるアイデアを出しあっているのが印象的でした。

4社それぞれの掛け算だからこそできたFinGATE TERRACEが兜町の街に根付き、受け継がれていくオフィスになるのが楽しみです!

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