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改めて知っておきたい「ストックオプション」の基礎知識

ベンチャー、スタートアップにおいてしばしば登場するストックオプションというキーワード。

なんとなくの意味は理解していても、どのように活用すべきか、どのような注意点があるのかまで把握できていないことも。

今回はストックオプションに関しておさらいしていきましょう。

1 ストックオプションとは?

ストックオプションとは、自社に勤務する取締役や従業員が事前に決められた価格で自社株を買うことができる権利のことです。

自社の株式価格が高くなっている時に権利を行使することで、従業員は会社への貢献に通じた株価の値上がり益を「金銭的な報酬」として得ることができます。

企業の株価を上昇させるためには、市場において自社が高い評価を受けるようになる必要があります。

ストックオプション制度の導入は「自身の労働を通じて自社の業績を上昇させることで、ストックオプションを行使した際に利益を獲得できる」といった、労働におけるインセンティブを高めることができる点が導入のメリットとなります。

まず、会社が従業員や取締役に対して、あらかじめ定められた金額(権利行使価格)で、会社の株式を取得できる権利を付与します。

従業員や取締役は、将来、株価が上昇した時点でストックオプションの権利を行使。その時点で、会社の株式を権利行使価格で取得し、その後、時価で株式を売却することになります。

権利行使価格と株価上昇分の価格との差が利益になるという報酬制度です。

すなわち従業員や取締役への報酬額が、その会社の業績向上による株価上昇と連動するということ。

このストックオプションは、アメリカで始まった制度です。日本では、1997年5月の改正商法において、ストックオプション制度が認定されました。

KLab株式会社、株式会社PR TIMES、アライドアーキテクツ株式会社、株式会社リンクバル、株式会社ネットマーケティング、株式会社ヘリオス、株式会社PKSHA Technology、株式会社MTGなどをはじめ、様々な企業がストックオプションを活用しています。

2 ストックオプションのしくみ

ストックオプションのポイントは、「あらかじめ決められた期間内であれば、あらかじめ決められた価格で株式を購入できる」ことと言えます。

例えば、株価が1株1,000円のとき、「今後5年間はいつでも自社の株を1,000株まで1株1,000円で購入しても良い」というストックオプションを付与されたとします。

その後、会社の業績が好調で株価も上昇し、3年後には株式市場で1株2,000円になったとしましょう。

その時点でも、従業員や取締役がストックオプションの権利を行使すれば自社株を1,000円で購入できます。

市場価格では1株が2,000円ですので、1株あたり1,000円も安く株を購入できることになりますね。

そこでもし100株を1株1,000円で購入して、そのときの時価である1株2,000円で売却したとします。そうすると「1株1,000円の利益×100株」で10万円の売却益を得られるわけですね。

3 企業がストックオプションを導入することのメリット

ストックオプションには、さまざまなメリットがありますので、確認していきましょう。

3-1 優秀な人材を確保しやすくなる

ストックオプション制度があることで、将来的なインセンティブを広くアピールできます。

これにより優秀な人材を確保に繋がる可能性があります。

さらに、入社した優秀な人材が「ストックオプションの権利を行使する前に辞めたら損かも…」と考えるようになることで、人材の流出を防ぎやすくなるのもポイント。

3-2 従業員のモチベーションがアップする

ストックオプションを付与することで、従業員や取締役のモチベーションアップに連動することも期待できます。

自社の業績が向上すればするほど株価が上昇して、ストックオプションでの利益が大きくなります。

そのため、従業員や取締役が「会社の価値を上げる」という点で一致した目標を持ちやすくなるのもポイント。

3-3 権利付与された従業員のリスクがない

個人的に自己資金で株式投資をする場合はリスクが発生しますが、ストックオプションにはありません。

当然ながら従業員が自社株を購入した場合、株価が下落した際には損失を被ります。

しかし、ストックオプションの場合、万が一株価が下落したら、そのときは権利を行使しなければ損失はゼロとなります。

4 ストックオプションのデメリット

ストックオプションには多くのメリットがありました。ではどのようなデメリットがあるのでしょうか?

4-1 業績悪化でのモチベーション低下も

どんなに成長性がある会社でも、業績が悪化して株価が下落する可能性は否定できません。
ストックオプション制度目当てで入社したメンバーのモチベーションも連動して下がってしまう可能性があります。

ビジョンなどに魅力を感じてくれていても数値として自分のメリットが低下していく現象をマネジメントするのは、なかなか難易度が高いと考えられます。

4-2 ストックオプションを保有している、していないによる温度差

ストックオプションを得ているメンバーとそうでないメンバーが混在している場合、社内で軋轢が発生することも。

そのためストックオプションを付与する基準を明確に定めておきましょう。

その際には会社業績への貢献度、勤続年数などの基準が考えられます。

4-3 権利行使後のメンバーの離脱

ストックオプション制度を前面に押し出して採用した人材の場合、金銭的な価値に重きを置いている可能性があります。

そのため、ストックオプションの権利を行使して、多額の利益を得た後はすぐに会社を辞めてしまうことも考えられます。

5 ストックオプションの税制優遇措置とは?

ストックオプションで得られる利益に対しては、税制優遇措置があるかどうかは、条件によって異なってきます。

税制優遇措置が設定されない「税制非適格ストックオプション」と、税制優遇措置がなされる「税制適格ストックオプション」について確認していきましょう。

5-1 税制非適格ストックオプション

税制非適格ストックオプションとは、税制優遇措置が設定されていないストックオプションのことです。

ストックオプションの権利を行使したときの時価が、権利行使価格を上回っている場合、その差額は「給与所得」となります。そのため所得税が課税されることになります。

さらに、株式譲渡における売却価格と権利行使時の時価との差額の利益分については「譲渡所得」となり、こちらにも所得税が課税されます。

5-2 税制適格ストックオプション

税制適格ストックオプションとは、税制の優遇措置を受けることができるストックオプションのことです。

税制優遇措置を受けるには、付与対象者要件や権利行使期間要件など、下記の複数の要件を満たさなければなりません。

税制適格ストックオプションに該当すると、ストックオプションの権利行使をした時点では課税されることはありません。

株式譲渡における売却価格と権利行使価格との差額が譲渡所得となり、そこに所得税が課税されることになります。

【税制優遇措置を受けるための要件】

  • 付与対象者が、自社の取締役・執行役または使用人およびその相続人であること(一定の大口株主およびその特別関係者を除きます)
  • 付与対象者が、発行株式総数の50%超を直接または間接に保有する法人の取締役、執行役または使用人およびその相続人に該当していること
  • 権利行使期間が、付与決議の後2年を経過した日から、付与決議の日の後10年を経過するまでのあいだであること
  • 権利行使価格が、ストックオプションについての契約締結時の1株あたりの価額以上であること
  • 権利行使価格が、年間1,200万円を超えないこと

6 ストックオプションの種類

これまでに解説してきたストックオプション以外にも、ストックオプションにはさまざまな種類があります。

それぞれの特性を理解した上で、どのストックオプションを自社の従業員や取締役に付与するかを決めましょう。

6-1 通常型ストックオプション

通常型ストックオプションは、会社の業績が向上したときのインセンティブの意味を持たせた一般的なストックオプションのこと。

権利行使価格は、権利付与したときの株価以上に設定します。権利を行使するときに権利付与したときよりも株価が上昇していれば、その差額が利益となります。

6-2 株式報酬型ストックオプション

株式報酬型ストックオプションは、権利行使価格を1円にするなど、低い価格に設定します。

それによって、ストックオプション付与者は、実質的に権利を行使する時点での株価と同等分が利益となります。

別名「1円ストックオプション」とも呼ばれており、退職金の代わりとして利用される場合もあります。

6-3 有償ストックオプション

有償ストックオプションは、権利付与したときの株価で新株予約権を発行するタイプ。

この時点で将来、新株を購入しなければならないという条件がつきます。

権利行使をするときに価格が上がっていれば、その差額が利益となる形態です。ただし、権利を行使するときの株価が権利付与時より下がってしまった場合には、損を被ることになる可能性があります。

7 ストックオプションの導入のプロセス

では実際にストックオプションを導入するとなったときに会社は何を行うべきなのでしょうか。ここからは行わなくてはいけない作業プロセスについて解説していきます。

7-1 財務局・証券取引所への事前相談(上場企業のみに適用)

上場企業によるストックオプションの発行の場合、財務局や証券取引所の事前確認を行わなければいけない場合もあります。

その際には、日程表などの書類準備といった作業も発生してきます。

7-2 役員報酬決議

会社法第361条に従い、役員に対してストックオプションを付与する場合、株主総会にて以下の内容を決定します。

  1. 報酬等のうち額が確定しているものについては、その額
  2. 報酬等のうち額が確定していないものについては、その具体的な算定方法
  3. 報酬等のうち金銭でないものについては、その具体的な内容

2と3については、取締役は株主総会にて当該事項を相当とする理由を説明する必要があります。

7-3 募集事項の決定

次に、以下の募集事項を決定します。

  • 募集新株予約権の「内容」と「数」
  • 引換えに「金銭の払込みを要しない」とする場合には、「その旨」
  • 「金銭の払込みを要する」場合には、募集新株予約権の「払込金額」又は「算定方法」
  • 「割当日」
  • 募集新株予約権と引換えにする「金銭の払込みの期日」を定めるときは、その「期日」
  • 募集新株予約権が「新株予約権付社債に付されたもの」である場合には、会社法676条の各号に掲げる事項(総額、金額、利率、期限等)
  • 上記の場合において、新株予約権付社債に付された募集新株予約権についての会社法118条1項、会社法777条1項、会社法787条1項、会社法808条1項の規定による買取請求の方法につき別段の定めをするときは、その定め

以下の表の通り、募集事項の決定は株主総会もしくは取締役会にて決議をとります。

またこの時、上場企業の場合、有価証券届出書提出や適時開示を行う必要がある場合もあります。

7-4 募集事項の通知/公告(公開会社のみ)

募集事項の決定を取締役会決議で行った場合、割当日の2週間前までに、株主に対し募集事項を通知、もしくは公告をしなくてはいけません。

ただし、この通知・公告は、割当日の2週間前までに、有価証券届出書など金融商品取引法で規定される届出を提出している場合は不要となります。

7-5 割当契約の締結/申込・割当

会社と引受者の間で、今回発行する新株予約権を引き受ける割当契約を締結する必要があります。

割当契約書には、引受者が会社の発行する新株予約権を引き受ける旨や割当する新株予約権の数やその内容、1株の払込金額などが盛り込まれます。

上記のようにストックオプションの割当を決める方式を「総数引受方式」と呼びます。

ストックオプションの場合は、設計段階で引受者と付与する数も決まっているため、一般的にこの「総数引受方式」を採用するケースが多い傾向に。

「総数引受方式」でない場合は、まず会社が申込みをしようとする者へ募集事項等の通知をし、その内容でストックオプションを引き受けたい者は申込みをします。

申込期間終了後、会社は申込者に対して誰にいくつストックオプションを割り当てるかを決定し、決定した内容を通知する、という流れになります。

7-6 発行・新株予約権原簿の作成

ストックオプションを割り当てられた者は、割当日に、新株予約権者となります。(=ストックオプションの発行日)

会社は、ストックオプションを発行した日以後遅滞なく、新株予約権原簿を作成し、第249条に定める事項を記載し、または記録しなければいけません。

また、上場企業の場合は、ストックオプション発行に関する適時開示を行います。

7-7登記

新株予約権は登記事項であるため、ストックオプションも登記を行う必要があります。

まとめ

今回はストックオプションに関してまとめてきました。

ストックオプション発行に係る手続きは、公開会社か否か、上場しているか否か、など様々な条件によって異なり、とても複雑です。

導入する際は専門家へ相談することをお勧めします。

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