組織、人材の多様化が進む中、当然ながらコミュニケーション戦略も進化をしています。近年特に重要視されてきているのが「インフォーマルコニュニケーション」。
自然発生的にこのインフォーマルコミュニケーションを誘発する仕組みを構築することがオフィス戦略においてもとても大切。
今回はそんなインフォーマルコミュニケーションに関してご紹介していきます。
1 インフォーマルコミュニケーションとは
インフォーマルコミュニケーションは、フォーマルコミュニケーションの対義語として使用されます。
会議などのフォーマルなコミュニケーションとは異なり、「組織や集団内で発生する、非公式や偶発的に生まれたコミュニケーション」のことを意味します。簡単に言ってしまえば職場における雑談などもこのインフォーマルコミュニケーションに含まれます。
このように聞くと難しい印象を受けてしまいますが、エレベーターの中で一緒になった時や、道端で偶然顔を合わせた時にするようなちょっとしたカジュアルな会話のことと捉えてみてください。
2 組織横断的な交流や、柔軟なアイデアの創出をサポートするインフォーマルコミュニケーション
組織では一般的には会議や打合せなどのフォーマルなコミュニケーションを活用することで情報伝達や意見交換、検討、意思決定などが行われます。そのため業務時間中の私的な会話などは、時間の無駄として基本的には歓迎されませんでした。
しかし柔軟なアイデアやダイバーシティがビジネスにおいてより重要視されてきたことで、職場でのコミュニケーション戦略も見直されます。
そこで「集団の成員がランダムであり、課題は予め準備されておらず、ルールや権力性などが排除された自然発生的な対話式のコミュニケーション」、すなわちインフォーマルコミュニケーションにスポットがあたることに。
インフォーマルコミュニケーションには、
- メンバー同士が互いを理解することで意思疎通やコミュニケーションを円滑にする
- 多様な情報の共有を促すことで、多面的な意志決定をサポートする
- 日常の会話の中での何気ないアイデアの交換や議論を通して新しいヒントを獲得する
などといった効果があります。
現代では特に情報が多様化しており、1人だけでのキャッチアップでは限界があります。そこでこのインフォーマルコミュニケーションを活用することが大切になってきます。
3 代表的な例「雑談」
インフォーマルコミュニケーションの代表的な例として挙げられるのが「雑談」。
仕事中の雑談はあまり良いことではないと考えられていましたが、逆に「仕事で役に立つ知見が得られる」「メンバー間の関係性が深まる」などとポジティブに捉えられる傾向もあります。
ですが特定のメンバーとしか会話をしていなかったり、集中したいのに雑談されてしまうなどの課題もあります。そのため「様々な人と話す機会を創出すること」「時間や場所のコントロールができるオフィス環境を構築すること」など雑談の効果を高めるための企業戦略が非常に大切なってくるんですね。
デスクを不規則にに配置するなど空間にしかけをつくることも効果的です。
4 カナダのウィンザー大学が2015年に行った研究結果
この研究は組織のある特定の場所で何気ない会話を「する人」と「しない人」にはどのような特徴があるのかを調べたもの。
結果として、雑談をする人は、「周りから見た好感度が高い傾向にあり、その人の能力に対する評価も高かった」そうです。
さらに、このような印象をもたれることで大事なプロジェクトにも採用されやすかったり、周囲からの助けも得やすいという事も明らかになりました。
5 「ソーシャル・キャピタル」の獲得のための交流
前述のように人からの助けを得ることができたり、信頼を獲得したりする能力を持っていることを社会関係資本(ソーシャル・キャピタル)と呼びます。このソーシャル・キャピタルを得る、向上させるには「積極的な交流を行うこと」が求められます。
誰かを助けたり、情報を提供したり、楽しく談笑したりすることが信頼感に繋がり、その信頼感が生み出す良好な関係性が組織でのパフォーマンス向上に繋がります。
もちろん交流には「質」も求められますが、企業側はまずは交流をする場、仕組みを作るということが大切ですね。
6 インフォーマルコミュニケーションを誘発する仕組み
とはいえ「インフォーマルコミュニケーションを大切にしよう!」と共有したとろで、「実際どうすればいいの?」となってしまうことも。
1人1人がコミュケーションをしよう!という意識を持つことも当然大切ですが、それ以上にオフィス戦略やオフィスデザインの設計も重要になってきます。ここからはインフォーマルコミュニケーションを誘発するオフィスの仕掛けをご紹介していきます。
6-1 マグネットスペースの設計
マグネットスペースとは、自然に人が引き寄せられるスペースのことを意味します。コピー機や自販機などなど、部署に関係なくメンバー全員が使用するスペースを活用します。
このようなマグネットスペースにテーブルを設置する、お菓子や飲み物を置いておくなども効果的な取り組み。
自然発生的な雑談が生まれるスペースを作ることにより、部署や普段なかなか話をしないメンバー同士での偶発的なコミュニケーションを促すことができます。
6-2 社内カフェスペースの設計
いつも見慣れているデスクや風景で仕事をしていると、脳への刺激が少なくなってしまい新しいアイデアが出にくくなってしまうことも。
いつも見慣れている景色とは異なるカフェスペースを導入することにより、アイデアが生まれやすい空間を作ることも可能です。
柔軟な発想でコミュニケーションが行えるカフェスペースはインフォーマルコミュニケーションにとても効果的。
しかし、メンバーがコーヒーをいれてすぐに自席に戻ってしまうとコミュニケーションが誘発できません。
カフェスペースに滞在するメリットを作り出せるように、雑誌や新聞、社内報などを置いておくのも有効かもしれません。
6-3 フリーアドレス制の導入
自分専用の座席ではなく、空いている席を自由に使って仕事を行うフリーアドレス制。
フリーアドレス制を導入することにより、普段会話することがないメンバーとの距離が近くなるため、特定のメンバーに偏らないコミュニケーションを促すことができます。
ちょっとした雑談から、仕事の進め方などの相談、知見の組み合わせによる新しいアイデアを生み出すきっかけを創出することができます。
まとめ
より多くの情報を活用し、よりスムーズなチーム連携が必要になってくる現代ではインフォーマルコミュニケーションの持つ潜在力を見逃せません。
ちょっとしたすれ違いの挨拶や一言を大事することはもちろん、オフィスレイアウトにおいての仕掛け作りもとても大切。
ぜひインフォーマルコミュニケーションを取り入れて組織活性を図ってみてくださいね。